「5・30-リッダ闘争四八周年記念集会」の中止についてのお報せ

「5・30-リッダ闘争四八周年記念集会」の中止についてのお報せ

2020年5月15日

オリオンの会事務局

Ck1nWedUUAE9I81


奥平・安田・岡本3戦士によるリッダ闘争は、1972年5月30日、<シオニズム・イスラエル・アメリカ帝国主義・アラブ反動派>の4つの敵に対する闘争として日本赤軍とPFLPの共同行動として闘われました。この闘争が示した国際主義を継承し記念するために例年開催していた「5・30リッダ闘争記念集会」を、今年は中止します。

 

私たちは毎年、記念すべき日に、新たな「5・30宣言」を発信して来ました。

今年は、集会を中止するにしても、国際主義者の立場から現実を直視した問題提起と、友人たちからのメッセージを5月末日には発信していきます。

 

この新型コロナウイルスが自然発生したものだとしても、その世界的な蔓延危機にまで至らせたのは、現実社会を支配する新自由主義-グローバリゼイションそのものに根拠があります。

この危機の終息を作りだし、その後の新たな社会経済システムの構築に向けて、私たちは現在から未来に向けて、何を準備し、何を批判して革命していくべきか。それらの諸点の考察への賛同を呼びかけていきたいと考えています。

 

そして、それら諸点の考察への、ネットによる討論を呼びかけていきたいと考えています。

 では、『5・30声明』の送付をお待ち下さい。

 

 

ご意見・ご連絡は 当ブログコメント欄まで

 


<岡本公三支援基金>協力のお願い

 現在、レバノンで政治亡命を認められ生活する岡本さんへの支援は、現地のボランティアを中心に続けられています。オリオンの会は岡本さんの闘病生活への支援を続けています。皆さんの多くの支援と協力をお願いいたします。

 

カンパ振込先

ゆうちょ銀行  10080-26778581 「オリオンの会」

 郵便振替口座  00150-8-514141 「オリオンの会」 


リッダ闘争47周年記念集会【新たな国際主義のための現状分析】廣瀬 純

2019年5月26日に行われた『リッダ闘争47周年記念集会』の講演、廣瀬 純氏による『新たな国際主義のための現状分析』の映像をアップしました。

今だからこそ、トランプのイスラエル―パレスチナ 政策を批判する

今だからこそ、トランプのイスラエル―パレスチナ

政策を批判する

学習会20190719

 オリオンの会 

 

1980年代から本格的に始まったグローバリゼーションの反動として帝国主義国のみならず世界各国でナショナリズム、保護主義、移民排斥主義が激化している。

経済のみならず政治や社会の国際化は、各国に深刻な影響を及ぼしている。グローバリゼーションは人々に商品経済での「恩恵」をもたらすと同時に、『世界の99%を貧困にする経済』(ジョセフ・スティグリッツ)とも言われ現に圧倒的多数を占めるプロレタリア階級に隷属することを強制し耐え難い苦痛を与えている。

途上国との競争に直面した帝国主義本国の労働者は雇用喪失を経験し、増え続ける移民・難民は受入国に経済的、社会的、政治的な摩擦を引き起こしつつある。アメリカ大統領にドナルド・トランプが当選したのも、こうした流れとは無縁ではない。



1.トランプ政権の基盤

●トランプの主たる支持層は高卒以下の労働者である。アメリカの世論調査機関ピュー・リサーチの調査によると高卒以下の白人の57%がトランプ候補を支持しているのに対して、クリントン候補支持する比率は36%にすぎない。逆に大卒以上の高学歴者では、クリントン候補支持52%に対して、トランプ支持は40%と逆転している。こうした高卒ブルーカラーは特に厳しい経済状況に置かれている。トランプはそうした層に対して「ブルーカラーの経済的苦境の原因はメキシコから不法移民が大量に流入する一方中国などの途上国によって雇用が奪われている」と訴えかけ、大きな共感を得たとされている。            

 トランプの主張する自由貿易協定破棄や1100万人といわれる不法移民の強制送還という主張は、喝采をもって受け入れられている。しかし多くの専門家はブルーカラー層の経済的な困窮は移民とは直接関係ないと分析しているにもかかわらず、トランプの主張は過剰に扇動的であるにもかかわらず、多くの国民の支持を得ている。特に南部のブルーカラー層はもともと保守的で、共和党支持層であった。だが共和党は大企業の代弁者として積極的にグローバリゼーションを進めてきた。

その結果、保守的なブルーカラー層は共和党支持層でありながら、共和党指導部から見捨てられてきた。彼らは必ずしも政治意識が高いとは言えず、投票所に足を運ぶことも少なかった。また労働組合が大きな支持層である民主党支持に転じることもなかった。

トランプはこうした共和党と民主党の狭間に落ちていた「南部の声なきブルーカラー層」の代弁者として喝采を持って受け入れられたのである。

トランプは演説で「我々は労働者の党になる。過去18年間、実質賃金が上昇せず、怒りに満ちている人々の党である」と訴え、続けて「多くの有権者は共和党指導部に不満を抱いている」と党執行部を批判しているとされている。

大企業の代弁者である共和党執行部は自由競争を柱とする新自由主義の政策を実現してきた。その結果、国民の所得格差は耐え難い水準にまで拡大し、政府への不満は極限にまで高まっていたのである。

FRB(連邦準備制度理事会)の調査では、55歳から64歳の退職間際の人々のうち19%は将来に対する備えは全くない状況に置かれている。労働者の30%が十分な貯蓄も持っていない。将来に対する不安は限界まで高まりつつある。そうした中で、共和党執行部から疎外され、リベラルな民主党を受け入れることができない保守的なブルーカラー層がトランプ支持者となっている。

※アメリカの貧困問題については

・堤未果「貧困大国アメリカ3部作」「沈みゆく大国アメリカ2作」等を参照

・村上龍が主催するJMMの寄稿者冷泉彰彦のプリンストン通信等を参照

 

●アメリカ政治においてイスラエル・ロビーやユダヤ票の動向は重要である。

しかし以下の通り、大統領選挙では毎回、ユダヤ系有権者のほぼ70%以上は民主党候補に投票し、共和党候補への支持は限定的である。

トランプの場合、ユダヤ票に関しては24%しか得票してないのが事実である。

またよく指摘されるアメリカのイスラエル・ロビーと、ユダヤ票の動向である。しかし、それ以上にトランプが配慮したのは、白人のキリスト教福音派であった。

 

さらにアメリカ社会に特有な現象がある。それは「白人プロテスタントの国家」であるアメリカ社会の変質である。数十年後にはメキシコなど中南米から移民してきたヒスパニック系アメリカ人が人口構成上最大のグループになり、しかもヒスパニック系アメリカ人の大半はカトリック教徒である。アメリカが「白人プロテスタントの国家」でなくなるのは、もはや時間の問題となっている。原理主義者と呼ばれる保守的なプロテスタントであるエヴァンジェリカル(キリスト教福音主義派)は焦燥感を強めていた。

※エヴァンジェリカルズ(キリスト教福音主義派)はアメリカ国内に推定1億人というアメリカ最大の政治勢力である。1億人は、アメリカの人口の3035パーセントを占める。彼らは聖書の教えを絶対視する保守系キリスト教徒であり、宣教活動やロビー活動、草の根の政治運動を通じてアメリカ外交に大きな影響を与えている。そして彼らは神がユダヤ人にエルサレムを与えたのであり、当然エルサレムはイスラエルの首都として認められるべきだと考えている。

エバンジェリカルは別名“ボーン・アゲイン・クリスチャン(生まれ変わったキリスト教徒)”と呼ばれる。エバンジェリカルの思想には、宗教から離れていたが、苦悩を経て再び神に導かれてキリスト教に帰依する者こそが本物のクリスチャンであるという考え方がある。

 たとえば、エバンジェリカルは、ブッシュ大統領(息子)はアルコール中毒になるなど苦しい経験を通してキリスト教を再発見した“ボーン・アゲイン・クリスチャン”であるとして支持した。ブッシュ大統領は当選後、ホワイトハウス内で聖書研究会を主催するなど、エバンジェリカルに傾斜していた。同様に、エバンジェリカルは非宗教的なトランプを“生まれ変わったクリスチャン”として受け入れられているのである。

 エバンジェリカルは保守的なブルーカラー層と同様に現状に不満を抱いている。具体的には2015年に最高裁判所が同性婚は合憲であるという判決を下したことで不満を募らせている。中絶問題など倫理的な問題に関してエバンジェリカルの主張は社会的に退けられつつある。

 それに対してトランプは積極的にエバンジェリカルの主張を受け入れ、それを共和党政策綱領に盛り込んでいる。具体的には、キリスト教を国家宗教にする、性的マイノリティであるLGBTを差別する法案を合法化する、LGBTに反対の最高裁判事を任命する、伝統的な結婚形態を支持する(同性婚反対)、公立学校で聖書の勉強を義務付ける、死刑制度を復活させる、性教育を止める、肝細胞の研究助成を中止する、中絶を禁止するために胎児に人権を認める憲法修正を行うなど、理解しがたい項目が共和党政策綱領に織り込まれている。それらはエバンジェリカルの主張そのものである。

 

●またトランプは“白人至上主義”を唱え、外交政策でも「アメリカ・ファースト」をスローガンに掲げ、軍事的にも政治的にも強力な伝統的アメリカ社会の再構築を訴え、支持を拡大してきた。「アメリカを再び偉大な国家に」というトランプのスローガンは魅力的に響いた。

 共和党は1964年以降、公民権法に反対し、黒人層を切り捨て、最大の有権者を抱える「白人の党」へと変わっていった。そのプロセスで黒人層だけでなく、穏健派も排除し、ひたすら保守主義の政策を推し進めてきた。だが、遠からず白人が少数派に転じることが明白な状況に直面した共和党執行部、共和党が大統領選挙で勝利するためには、白人の党を脱皮し、より広範な支持層、具体的にはヒスパニック系アメリカ人に代表されるマィノリティーや女性を取り込む必要性を感じていた。

 特に2012年の大統領選挙でのミット・ロムニー候補の大敗を契機に、共和党全国委員会は路線変更を模索し始めていた。だが、トランプはそうした党執行部の意向とは別に、縮小しつつある白人層の支持層を深化さようとしたのである。それがトランプと共和党主流派の間に決定的な亀裂を引き起こしている。

さらにトランプ現象の特徴は、前述したキリスト教原理主義者ともいわれるエバンジェリカルの支持を得ていることだ。エバンジェリカルは大統領選挙の帰趨を決定するほど大きな力を持っている。特に2008年の大統領選挙でブッシュ大統領が地滑り的勝利を収めたのは、エバンジェリカルの支持を得たからである。

外交政策でもトランプは「アメリカ・ファースト」を主張し、孤立主義を訴えている。フォーリン・アフェアーズ・リポート等に寄稿する知識人等は、その政策をヒトラーの政策と同じだと批判している。また共和党主流派の現実主義の外交専門家は、トランプ候補の外交政策を非現実的と退ける。だが、アメリカ社会は伝統的に孤立主義の傾向が強い。

初代大統領のジョージ・ワシントン大統領は大統領職を去るにあたって行った演説のなかで「我が国の偉大な行動ルールは、諸外国と経済的関係を拡大する際、できるだけ政治的な関わりを持つべきではない」と語っている。モンロー主義を挙げるまでもなく、ワシントン大統領の遺伝子はアメリカ政治に組み込まれている。第1次世界大戦にも、第2次世界大戦の際にも、アメリカ国民は参戦に反対し続けた。トランプは、そうしたアメリカ社会の孤立主義を巧みに喚起しているのである。

 さらに共和党政策綱領の中には、英語を公用語にする、不法移民への恩赦を禁止する、不法移民を排除するためにメキシコ国境に壁を建設する、銀行の規制緩和を進める、消費者保護を中止する、労働組合を縮小させるといった超保守的な主張も盛り込まれている。

 

625日から2日間にわたり米国政府主催で開かれた「繁栄に向けた和平」と名付けられたワークショップ(会議)では、トランプの娘婿であるクシュナー大統領上級顧問が2年前から考案してきた、新たな中東和平案の第1弾「経済部分」が発表された。経済部分とはつまり、パレスチナ自治区とパレスチナ難民を受け入れている周辺国に対する経済支援のことで、ユダヤ教徒クシュナーは会議の冒頭、今後10年間で約500億ドルを同地域に投資する計画を発表した。

(別添資料参照)

  この計画は、約500億ドルの投資によってインフラなどさまざまなプロジェクトを実施し、パレスチナ自治区のGDPを倍以上に拡大、100万人の雇用を生み出すことで、失業率を1桁台に低下させ、貧困率を半減すると流布されている。

500億ドルのうち純粋な経済援助は約130億ドルで、残りは融資や民間企業による投資を見込んでいる。

 パレスチナ自治政府は、会議開催の発表後すぐ、参加ボイコットを発表した。パレスチナ自治政府は、1967年以前の境界を国境とし東エルサレムを首都とするパレスチナの独立国家を樹立する「二国家解決案」を望んでおり、今回の会議は「パレスチナに国家樹立を諦めさせるための買収劇である」と非難している。会議の前後にパレスチナ人は、「パレスチナの土地は売り物ではない」というスローガンを掲げた風刺画をSNSに投稿するなどして会議に抗議。会議開催前からパレスチナ自治区やアラブ諸国では会議反対のデモが起き、またイラクの首都バグダッドでは、会議の開催国となったバーレーンの大使館が襲撃され、米国とイスラエルの国旗が燃やされるなど反対運動が激化している。

イスラエル政府も会議に参加しなかったが、イスラエル人のビジネスマンは参加した。バーレーンはイスラエルと外交関係を持たないため、イスラエル人ビジネスマンがバーレーンで会議に参加することは異例のことと報道されている。

パレスチナ自治政府が会議をボイコットする中、これまでパレスチナ側に立ってきたアラブ諸国が会議に出席するかどうかが注目された。イラクやレバノンは会議をボイコットしたが、クシュナーが会議前にアラブ諸国を外遊し参加を呼び掛けたこともあり、開催国のバーレーンに加えサウジやUAE、カタールなどは大臣級が出席、ヨルダンやエジプト、モロッコなどもさらに低いレベルではあったが会議に参加した。また、IMFのラガルド専務理事やソフトバンクグループの孫会長兼社長も会議に参加した。

 今回の会議でクシュナーは政治解決に言及しなかったが、トランプのこれまでのパレスチナ問題への対応を見れば、そのイスラエル寄りの姿勢は明らかである。トランプ大統領は「エルサレムはイスラエルの首都である」と宣言し、テルアビブに設置していた大使館をエルサレムに移転し、パレスチナ難民支援を担当する国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWAへの拠出金を停止し、パレスチナ解放機構のワシントン事務所を閉鎖した。そして、20193月末には、イスラエルが第3次中東戦争で奪ったゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めた。

●注目すべきは国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWAへの拠出金を停止することにより難民の定義を変更し、支援対象者数を大幅に減らすよう求めているとされる点だ。つまりパレスチナ難民の数を強引に「ゼ口」にすることで問題の“解決”を図ろうとしているのが見えてくる。UN RWAは、1948年のイスラエル建国と第1次中東戦争で発生した難民を支援するため、翌49年に国連総会で時限的な機関として設置された(活動開始は50年)。居住地を焼け出されるなどしてUNRWAに登録された難民は当初、ヨルダン川西岸やガザ、レバノン、ヨルダン、シリアなどに逃れた約70万人だった。それが今では、500万人を超す。UNRWAは最初に難民となった人々の子や孫の世代も難民として認定しているからである。ちなみに難民問題を扱うもうひとつの国連機関、国連難民高等弁務官事務所(UN HCR)の基準では、第三国の国籍を取得した難民の子孫は難民として扱われなくなるのだが、UN RWAは国家を持たないパレスチナ人にはもともと変更する国籍がないなどの事情もあって、難民がホスト国の国籍を取得しても難民資格を与えている。現在のUN RWAの認定基準に従えば、パレスチナ難民は今後も際限なく増え続けていくことになる。

 トランプはまさにこの点に危機感を持っている。トランプの狙いは定義変更により強引に「難民ゼロ」を作りだそうとしているのである。

UN RWAの年間予算の約3割を負担する最大拠出国である米国が拠出を停止すれ     ば、UN RWAの運営に支障が出ることも避けられないトランプ政権内では、UNR     WAの活動期限をこれ以上更新せず、UNHCRに機能を統合させるべきだとの意見もあるといい、UN RWAは今後強い圧力にさらされるとみられる。

今回米国が資金拠出停止を発表したUNRWAに関しても、クシユナーは「UN     RWAを崩壊させるための誠実で真撃な努力が必要だ」と政権内の電子メールのやりとりで書いていたことが、8月に米外交誌フオーリン・ポリシー(電子版)が報じたスクープで判明している。これもUN RWAによるパレスチナ難民支援が問題を長期化させている原因だとするイスラエル右派の言説に沿ったものだ。

                     

●トランプ政権は前述したUN RWAへの拠出停止をはじめ、立て続けにパレスチナ関連の支援を縮小。その狙いは、パレスチナへの圧力を強化することで「イスラエルとの和平協議に応じるようパレスチナ側を促す」(ナウアート国務省報道官)ことにあるとしている。和平が進展しない責任は、占領地・東エルサレムや西岸での入植活動などを続けるイスラ工ル側ではなく、協議を拒否しているパレスチナ側にあるとの論法を展開すると予測される。

 201892日、イスラエル紙ハーレツなどは、「自治政府トップのアッパス議長が明らかにした話として、「クシュナー氏側がアッバス氏に、ヨルダンとの「連邦国家」を結成するよう提案していたと伝えた。アッバス氏はまずパレスチナ国家が樹立された上で、連邦にイスラ工ルも参加するのであれば賛成すると返答し」、実質的には同案を一蹴したという。提案が事実だとすれば、パレスチナに自前の独立国家樹立を諦めろと言っているにも等しいから、当然の反応であろう。

パレスチナ自治政府が望んでいるのは独立国家の樹立であり、イスラエルによる占領統治下での生活改善ではない。国家樹立を含む政治解決無くして、いかなる和平案も受け入れられないというのがパレスチナ自治政府の立場である。

パレスチナ自治政府は、将来の「2国家共存」に向けたイスラエルとの和平協議で、国境画定や聖地エルサレムの帰属、治安権限などと並ぶ重要争点にこの500万人超の難民の「帰還権」問題を掲げ、イスラエルから譲歩を勝ち取る交渉材料にすることを狙っていると推測される。

 イスラエルは、自国の人口構成を大きく崩すことになりかねない難民の帰     還権は認めていない。

パレスチナ自治政府が望んでいるのは独立国家の樹立であり、イスラエルによる占領統治下での生活改善ではない。国家樹立を含む政治解決無くして、いかなる和平案も受け入れられないというのがパレスチナ自治政府の立場である。クシュナー氏の中東和平案の第2弾「政治解決部分」の発表が待たれるが、20199月に実施されるイスラエル総選挙後の政権発足を待つようで、政権発足は早くても11月頃の予定である。しかしその頃、既に米国は大統領選挙キャンペーン真っ只中のため、再選への悪影響を考えて、トランプは政治解決案の発表を大統領選挙後まで先送りするのではないかともいわれている。

 

 

2.イスラエル=ユダヤ社会の動向

●アメリカの社会構造の変動と同様の構造変動がイスラエルにおいても顕著になっている。最大の要因はイスラエルのユダヤ社会が政治的にますます右傾化していることである。ユダヤ社会の右傾化は2000年代に入り顕著となり,自らを「右派」とみなすユダヤ人が増えている。

  イスラエル民主主義研究所が2018年に行った調査では回答者の52.3%が自分を「右派」「右派寄り」とみなし,「左派」「左派寄り」の合計20.4%を大きく上回っている。イスラエル国内では1990年代に始まったパレスチナ側との和平交渉は平和への期待を高めたが,交渉は行き詰り,むしろ「暴力」の応酬が拡大したとの認識が主流である。この結果,イスラエルのユダヤ人の多くは右傾化し,ユダヤ民族の優位や力の重視,占領地の保持など,より民族主義的な主張をするタカ派の政党が支持を集めている。そのため過去10年間の選挙では,いずれも右派政党と宗教政党が合計で国会の過半数を制し,ネタニヤフ政権を支えてきた。

この動きに拍車をかけたのはトランプ政権がエルサレムやゴラン高原の帰属問題などで次々にイスラエルを支持する政策を打ち出したことや,好調な経済がネタニヤフの続投を後押ししたといえる。

イスラエルではパレスチナ独立国家樹立を危険視する見方が強まっており,ネタニヤフ政権はトランプの和平案を受け入れるに違いない。

  この結果,「パレスチナ人は和平の実現に背を向けている」といった非難が,パレスチナ側に集中することが十分に予想される。そうした非難の高まりを好機として,イスラエル国内で西岸併合の動きが強まる可能性が高い。連立政権に参加予定のリクードなど3党は西岸の相当部分,あるいは全部の併合を主張している。ネタニヤフ首相も投票日直前に,西岸にある全ユダヤ人入植地にイスラエルの主権を及ぼすと発言した。

 

トランプが3月下旬に,ゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めたことも,イスラエルによる西岸併合の動きを活発化させている。ネタニヤフ首相はゴラン高原併合直後の3月末,「防衛のための戦争で占領した土地は我々のものだ」と述べている。イスラエルからするとゴラン高原や西岸を占領した1967年の第3次中東戦争は「防衛のための戦争」であり,西岸の併合も正当化されることになる。しかもトランプは西岸併合に決して反対しないだろう。

 西岸全域は「パレスチナ自治区」と称されるが,パレスチナ自治政府の管理下にある地域は西岸全体の40%に過ぎず,しかも地理的な連続性のない島状になっている。残りの60%はC地区と呼ばれ,入植地が点在し,現在もイスラエルがすべての権限を握っている。ネタニヤフ首相がいう「全入植地に主権を及ぼす」ということは,おそらくC地域全域,あるいはそのほとんどをイスラエルが併合することを意昧していると推測される。そうなるとパレスチナ独立国家を作る土地はなくなる。

 

西岸とガザには現在,約500万人のパレスチナ人が住んでいる。国連によればこのパレスチナ人人口は,2030年には1.4倍の690万人に,2050年には2倍近い950万人になると予測されている。さらにイスラエル国籍を持っている約190万人のパレスチナ人が,イスラエル国内に在住している。占領地を含めイスラエル支配下にある全地域で,ユダヤ人とパレスチナ人の人口バランスがどのように推移するかについてはさまざまな予測があり,ユダヤ人人口の方がパレスチナ人の人口を今後も上回り続けるとの推測もある。

   いずれにしても「ユダヤ人国家」とされているイスラエルの支配地域で,ユダヤ人人口はせいぜい半分程度か,場合によっては少数派に転落するという状況が今後も続くことになる。これほど多数のパレスチナ人をイスラエルは力で支配し続けるのだろうか。

 

3.再びトランプ

 トランプは3月下旬,ゴラン高原に関する米国の長年の政策を転換し,イスラエルの主権を認めると宣言した。「戦争による領土の取得は認められない」という考えは国際的な原則であり,国連決議で何回も確認され,米国の歴代政権も支持してきた。だがトランプはこうした国際原則をあっさりと葬り去った。エルサレムの首都公認やイラン核合意からの離脱と同様に,イスラエル寄りの姿勢を強調することで,米国内のキリスト教徒の白人福音派の支持をより強固にすることを優先したからである。

   保守的な白人福音派はトランプ大統領だけでなく,共和党にとっても最大の票田となっている。彼らは信仰上の理由からユダヤ系のイスラエル・ロビー以上に,ホワイトハウスや米国議会にイスラエル寄りの政策を実行するよう圧力をかけている。保守という共通項を持つリクードも,1990年代から白人福音派とのパイプを構築してきた。今やイスラエルの右派と,米国の白人福音派,さらに共和党はある種の「三角同盟」を形成し,イスラエルの右派の主張に沿う方向に米国の中東政策を動かしている。

オリオンの会学習会案内「今だからこそ、トランプのイスラエル―パレスチナ政策を批判する」

オリオンの会学習会案内

「今だからこそ、トランプのイスラエル―パレスチナ政策を批判する」

7月19日(金)19時~  新橋バルーン 204号室

rIMG_4905

6月末に大阪で開催された「G20サミット首脳会議」は<金融・世界経済に関する首脳会議>として、世界経済を牛耳る世界の首脳が、たとえ自由主義、保護主義であろうが、それぞれの<自国第一主義>を基軸とした駆け引きの場であることがさらに明らかになった。それは米―中会談などそれぞれの2国間協議の場所を議長国である日本が設定したこと以外何物でもない。安倍の最終報告は結局何の内容もないものであった。


 アメリカ大統領トランプもまた、G20を、自国第一主義の保護主義で貫き、ハプニング的に板門店を訪問し、金正恩と会談し、国境を越えるパフォーマンスを演じた。こうした背景にはアメリカ大統領選挙対策があることは明白である。「日米安保条約」見直しも日本負担を重くするぞという保守派向け発言であり、アメリカ大使館のイェルサレム移転やゴラン高原占拠承認などの一連のイスラエル支援策も国内ユダヤ人、シオニスト、福音派などに対するアピールに他ならない。


 6月26日にはトランプ大統領の娘婿クシュナー上級顧問から、中東和平案の一環として、パレスチナに対する500億ドル(約5兆4000億円)規模の経済支援計画が提案された。こうした資金は主にアラブ諸国から調達し、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザ地区での雇用創出と貧困率の半減が目的とされている。これに対して、イスラエルの入植―占領やパレスチナ国家樹立など政治的争点を先送りするものとしてパレスチナ自治政府からも一切相手にされていない。


 アメリカ―イスラエルのこの間の動向と、イランも含めた中東情勢を率直に分析、学習し、グレートリターンマーチの闘いを持続的に展開しているパレスチナ民衆と連帯する方向性を共有していこう。


 ぜひ学習会にご参加ください。


連絡先)090-2745-5036

ベイルートにおける5.30記念集会・現在の岡本公三さんの様子

2019-5-31、ベイルートの英雄墓地で行われた5-30記念集会。
中心に岡本公三さんの姿がある。
0a16636f-6bc8-4a70-aa0e-2f455df848e3
51bfff53-485d-4413-aa05-78bc16ef44ed

ギャラリー
  • 「5・30-リッダ闘争四八周年記念集会」の中止についてのお報せ
  • リッダ闘争47周年記念集会【新たな国際主義のための現状分析】廣瀬 純
  • オリオンの会学習会案内「今だからこそ、トランプのイスラエル―パレスチナ政策を批判する」
  • ベイルートにおける5.30記念集会・現在の岡本公三さんの様子
  • ベイルートにおける5.30記念集会・現在の岡本公三さんの様子
  • 岡本公三メッセージ
  • 5・30リッダ闘争47周年記念声明 新たな革命の継続へ向けて 『今こそ、国際主義の復権を!』
  • 5・30リッダ闘争47周年記念声明 新たな革命の継続へ向けて 『今こそ、国際主義の復権を!』
  • 5・30リッダ闘争47周年記念声明 新たな革命の継続へ向けて 『今こそ、国際主義の復権を!』